私が息子として所属していた一家は、私の小学校入学直前に引っ越しをした。
私への配慮だったと思う。
知り合いがいない環境に入っていくにしても、学期途中よりは入学の時から、最初からの方がいいだろうということだったと思う。
今考えても、両親のその判断・配慮はありがたい。感謝している。
色んな幼稚園・保育園から生徒が集まってきていたので、みんながみんな顔見知りという出来上がっている集団ではなかったが、幼稚園が同じだったとかで最初から友達がいる子たちもいた。
そんな中で、引っ込み思案な上に知り合いが一人もいない状態の私がよくやっていけたなと今になるとそう思うのだが、一人の友の存在が大きかったように思う。
同じ団地に同じ時期に引っ越してきたゆうちゃん(仮名)。同じく新一年生の男の子。
同じクラスにそのゆうちゃんがいた。同じクラスになったことで初めて顔を合わせたゆうちゃん。
私は毎日ゆうちゃんと登下校した。
私は末っ子で依存心が強く、その傾向は今も多少残っているのだが、ゆうちゃんはそんな私よりもさらに弟のような感じで「私がしっかりしなければ」という思いにさせてくれる存在だった。
下校の時にゆうちゃんが突然ぽろぽろと泣き出したことがあった。「あ~」「あ~」と。
戸惑う私にゆうちゃんは言った。私の目を見て。「うんこがもれる」と。
「ほら、仕方ないからそこの茂みの中でやりなよ」というと、「うん」と言ってゆうちゃんは野ぐそした。
それが一度や二度ではなかった。
(言い過ぎかな。でも最低でも2回はあった。)
そのうちの1回は、登校時に雨が降っていて、下校時に雨がやんでいた日だったので、持っていた傘でゆうちゃんを隠してあげた。
運よく同級生も上級生も通りかからなかったが、よく考えたらよくあんなところでうんこしたもんだな、ゆうちゃん。
ゆうちゃんは何年生の時だったか忘れたが、引っ越していった。
今どこで何をしているのかは知らない。
引っ込み思案だった私が、一人も知り合いがいない小学校に通えていたのは、君のおかげだった気がする。
ありがとう。
感謝の表れとして、ゆうちゃんという仮名をくつがえして本名を明かすようなことはしないから、安心してください。