こうきちの小屋 はるのこうきち雑記ノート

抱きまくら抱きしめて眠るおじさんの日々

「大家さんと僕」矢部太郎

漫画「大家さんと僕」
以前読んで、最近もまた図書館から借りてきて再読したばかりです。
とても好きな漫画です。

大家さんと僕

ポジティブな評価はみなさんが色んなところで書かれていると思うので、私からはちょっとだけひねくれた感想を。
(私は本当にこの漫画が好きなんですけどね、何度も借りてくるくらいに(汗))

 

この大家さんは(戦時中は別として、その後は)「食べることに苦労することがなかった資産家なんだよな(たぶん)」って、ちょっと思いました。
購入する明太子の価格。タクシーで百貨店に乗り付け。
上級すぎるよ(汗)。って思いました。

著者の矢部さんも「シリーズ累計120万部!」の成功者になりましたもんね。
ただただうらやましい。
もちろんご本人の人柄と才能によるものですが、うらやましいよ~

でも、この大家さんは本当にチャーミングだし、私もこの漫画はとても好きです。本当に好きです。

 

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私、若い頃、超おんぼろ建物に住んでいました。玄関ドア個別トイレ個別ですが風呂なしのボロ建物(集合賃貸物件)。

その2階に数年住んでいたのですが、1階にかなりご高齢のおばあさんが住んでいました。独居おばあさん。
私とおばあさん以外には、外国からの出稼ぎ夫婦(?)や、ご高齢のお父さんを介護しながら同居している感じの中年のご婦人や。姿を見たことがない謎の住人の一室もありました。そして私。そんな感じの居住者構成。
でも、私はおばあさん以外とはほとんど顔を合わせることがありませんでした。謎に満ち満ちた居住者たち。今思うとなかなかの人生模様。

2階の私の居室から階段で地上に降りたところに、おばあさんがくつろいでいることが多いベランダがありました。目の前はブロック塀のじめじめ日陰の狭小空間。ベランダというよりは実質「日陰の縁側」でしたが、そこでおばあさんにつかまると話が長いので「居なければいいな・・・」といつも思ってしまっていました。

つかまると本当に話が長かった(涙)
用事がある出発時は最初から「すみません!用事あります!」でいいのですが、帰宅した時が困りものでした。
どのタイミングで話の腰を折ったものか、毎回苦労していました。

おばあさん、身寄りがなさそうだったので寂しかったんだと思います。

 

でも、「大家さんと僕」の大家さんのような上品な方ではなく、おばあさんが話すのは私たちにとっての大家さんの悪口や、他の居住者への不満や、世の中の色んなことへの悪態や。そしてそれ以前に何を話しているのか聞き取れないことも多く。話に夢中になってくると歯が抜けた口元からつばが飛び。

矢部太郎さんは本当にラッキーでしたね、と思います。

 

「私はあのおばあさんにもっと優しくしてあげるべきだったのだろうか。」
自分では、可能な限りの誠意は見せたつもりではいますが、十分だったのかどうかはわかりません。
でも、今思い返しても、私にはあれ以上の対応は無理だっただろうと思います。(ほとんど何もしていないのですが・・・。)

 

私があのおんぼろ建物から退居して既に数十年。
いつだったか、「あのおばあさんがお亡くなりになったことは間違いないはずだけど、あの建物はどうなったんだろう・・・」と思って、グーグルマップで検索したことがあります。
ストリートビューで訪れた、かつてわが居室があった場所は、コインパーキングになっていました。