こうきちの小屋 はるのこうきち雑記ノート

抱きまくら抱きしめて眠るおじさんの日々

KINGを一時保護した話

中学時代の話。
私は在籍していた運動部で非主流派だった。
私も含めた「レギュラーじゃない者」で固まっていた。
ただ、主流派にもレギュラーじゃない者はたくさんいた。レギュラー・非レギュラーがはっきりしていない新一年生時代から形成されてきたものなのだから、まあそれは当然なのだった。
私が所属した非主流派はレギュラーは一人もいなかったが、グランド外では卑屈になることもなく、独立自治区のようなありようだったと思う。

上級生が引退し、自分の代が最上級生になる2年の夏からは、部室が使えた。
でもわが独立自治グループは部室に入らなかった。
レギュラーになれそうにない引け目よりは、ぎゅうぎゅうの部室で着替えることのわずらわしさを避けた。
倉庫のような平屋建ての部室棟と部室棟のその切れ目。屋根もないその「切れ目スペース」がわがグループの拠点だった。


引退間際の最後の大会を控えた頃だっただろうか。
主流派の中で動きがあった。
遊びの時などグランド外で特に中心的な存在だった者が、主流派の中で孤立していた。
彼に対する無視が始まっていた。
彼は部室に入れなくなっていた。
彼がいない、でも近くにはいるとわかっているはずの主流派たちは、部室の中から「KING~!」「KING~!」「何様だよ!?KING~!」と誰かが叫んではドッと湧いていた。(誰が叫んでいるのかは声でわかるのだが)

どうやら、部室からはじき出された元・中心人物の彼が「KING」らしかった。
それまではそんな呼ばれ方はしていなかった。

わが独立自治グループのメンバーが情報を仕入れてきた。
「遊びの時にズルをし過ぎることで、とうとうみんなの我慢の限界を超えたらしい」と。

これは例えだが、ゴルフで自分の打った球が望むような位置に止まらなかったからといって、それを勝手に動かしてはフェアな戦いにはならない。
でも、KINGは長年に渡ってそれをやってきていたらしい。

多分、我慢が出来ずに誰かが口火を切ったのだろう。
「みんな気づいてないかもしれないけど、○○って、●●勝負の時、いつもズルしてるんだぜ。」

「いや、俺も気づいてた」「俺も」「知らなかったけど、マジか!?道理でいつも負けるはずだ。巻き上げられた分、返してもらいたい」
そんな感じで一気に憎悪の炎が燃え上がったのだと思う。

その情報を知ったわれわれ独立自治グループは、「まあ、それなら自業自得だな」と思った。
だから、主流派に「やめてあげなよ」などとは言わなかった。

でも、聞こえていることがわかっていて、多勢に無勢で「KING~!」「KING~!」と湧いているのもどうかと思った。
部室内にいた全員がそれを楽しんでいたわけではないだろうが、「それもどうかと思う」というのが、わが独立自治グループの共通認識だった。
(このへんの感覚が一致するから、われわれは一緒にいたんだなと思う。)

だから、KINGが屋根のないわれらの「切れ目スペース」で着替え始めたことについて誰も何も言わなかった。
「ここはお前の場所じゃない」とは言わなかった。

練習が終わった後の下校。
ほぼ全員が同じ方向に帰る。
KINGはかつてのように主流派とは歩けず、かと言って一人とぼとぼと帰ることもせず、わが独立自治グループのかたまりと一緒に歩くようになった。
それについても、誰も何も言わなかった。普通に会話もした。

彼が主流派から受けている仕打ちは自業自得だとは思ったが、主流派に対して「ちょっと度が過ぎていないか?」という思いがあったのは事実だ。
独立自治グループ全員でKINGを一時保護しているようなそんな感覚だったように思う。

部活の最後の大会が終わると、彼がわれわれ独立自治グループに近づいてくることはなくなった。
彼へのいじめはクラスにまでは及んでいなかったそうだから、引退後はクラスの友とやって行ければそれで良かったのだろう。

こうしてわれわれのKING一時保護は終わった。

KINGが今どこで何をしているのかは知らない。
もし、KINGが事業で大成功して億万長者になっていたとしたら。
その上でもし、あの時のことについてわれわれに「恩を返したい」という思いを抱いているのなら。

彼がわれわれを探し出してそれぞれに2億円ほど渡したいのだとしたら、私はありがたくちょうだいします(笑)

 

 

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(今回のKINGと、過去記事「休み時間のドッジボール」のヤンキー君は同一人物ではありません。)

(今回の記事を政治に絡めるつもりはなかったのですが、自民党に対して「よくよく考えると、なんか自民党っておかしくない?」と誰かが口火を切って、政権交代への期待感が高まるのは悪いことではないと思います。今回の記事はそれを目指したものではありませんが、最後にそれは思いました。

KINGの件については主流派に対して「度が過ぎじゃないか」と思った私ですが、世の中の皆さんが自民党に対して、理性にのっとって正当な批判を表明するのはとてもいいことだと思います。

自分の身の回りの小さなせまい世界で、これまでは言いにくかったとしても、「よくよく考えると、なんか自民党っておかしくない?」と口火を切る。私は基本腰抜け野郎ですが、職場や親族内でそれを言ったこと、ありますよ。とは言っても、人それぞれに事情があるでしょうから、無理は禁物です。でも、「よくよく考えると、なんか自民党こそダメじゃない?」と強く思うようになった方がもしいらっしゃれば、私がそうであったように恐れおののきながらでも、小さな一歩を踏み出してみてはどうでしょうか。って、アクセス極少の私のブログで呼びかけても仕方ないんですけどね(苦笑))

 

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